許されたひと/恋月 ぴの
 
ふりをする




わたしはボトルに入れた手紙になりたかった
遥か七つの海を旅して
やがて好きだったあのひとに拾われる

わたしのことなんか忘れてしまっているだろうけど
つたない文面から思いの丈の僅かでも彼に伝わるのなら

これまでの人生は無ではなくなるし
彼のこころの片隅で生きていくことができる




おひとり様って便利なことば

胸元まで冷たい湖水に浸かっているはずなのに

安らぎさえ感じられて

お魚にでもなったように掌で許されることの幸せ感じながら
爪先で星屑みたいな砂を蹴る





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