許されたひと/恋月 ぴの
ふりをする
※
わたしはボトルに入れた手紙になりたかった
遥か七つの海を旅して
やがて好きだったあのひとに拾われる
わたしのことなんか忘れてしまっているだろうけど
つたない文面から思いの丈の僅かでも彼に伝わるのなら
これまでの人生は無ではなくなるし
彼のこころの片隅で生きていくことができる
※
おひとり様って便利なことば
胸元まで冷たい湖水に浸かっているはずなのに
安らぎさえ感じられて
お魚にでもなったように掌で許されることの幸せ感じながら
爪先で星屑みたいな砂を蹴る
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