リストカット日和/竜門勇気
八月の夜は不潔すぎて
僕のナイフは錆びている
母が泣いていて
父が笑っていた
テレビが光っていた
日曜日は誰もいない
消えない傷について考えよう
せっかくなら背中に知らない誰かの名前を刻みたかった
天秤が壊れていたから
どっちがいいのかわかんない
七月の朝は静かすぎて
僕は土になったふりをする
犬が死んでいる
猫が死んでいる
蛇が死んでいる
なんだかわからないけだものが死んでいる
広域農道は死でいっぱい
死んで間もない狸の腸は
桜よりも淡い桃色です
ハンドルを大きく切ったけど
間に合わない
僕はなんで生きているんでしょうか
会社に辿りつけない
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