牛と番人/三之森寛容
 
この男
牛車の番人にして
我詩人と名乗る


牛は立ち止まり
男は押し引きするが
びくともせず


飼い葉を与えれば
食い尽くし動かず


流行りの歌を唄えば
聴き入り眠りの中


高尚な本を読み聞かせば
唯唯頷くだけ


意味深な名画を見せれば
ジッと魅入るだけ


ならばと
我が詩を披露すれば
そっぽを向き動かず


腹を立てた男は
牛を叩いてみるが
素知らぬ顔


男は牛の角に
手を引っ掛け鮮血を流し


それを見た牛は
ゆっくり動き出す


男は仰ぐ
空の無いの空
届かぬ手で
灰色のベールを
掻き分けながら
叫び続ける
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