眠れない夜/アマメ庵
 
暦は秋に変わっても 空気は蒸し暑さを残していた
遠くで蝉が
近くでコオロギが啼く

時計の針が かしゃり かしゃり
普段は気にならない音が 勘に障る
暑くて 煩くて 眠れない

暗闇の中
手さぐり検討で 時計を探した
かしゃり かしゃり
壁から外す
躊躇わない
窓の外に放り投げた

耳をすませても
時計は落ちなかった
何も落ちなかった
大きな音がすれば すっきりしただろうに
遠くで蝉が
近くでコオロギが啼いていた

暑い
耳障りな時計がなくなっても 暑い
かしゃり かしゃり
時計はついて来た
確かに 投げ棄てたのに
確かに そこから消え去ったのに
かしゃり かしゃり
時計はついて来た

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