二重歩行/橘あまね
 
それはいつもとおなじ散歩道
いつもとおなじ日曜日の
気だるい午後に
わたしは、
歩いているわたしの背中を
見つけてしまった

(あれはもうひとりのわたし?
それともいつもの白昼夢?
微かな風がほほを撫でれば
目覚めてしまう
いつもとおなじ白昼夢?)

でも今日は
こんなに風のつよい日なのだから、
わたしはたしかに
わたしのうしろを歩いて
いるのだろう

わたしはわたしについてゆき、
深い樹界にまよいこむ
暗い、暗い、極相の森

真っ暗な森の中、
淡くひかる銀色の蝶が
ひらひら、ひらひら
わたしはそのちいさな
反映をたよりに
痩せたわたしの

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