便器男/そよ風
 
『便器に頭を入れて流してほしいんだ。』
その男は言った。

『えっ?』
あまりに突然の話しに戸惑う。

男はもう一度
『便器に頭を入れて俺を流してほしいんだ。』
別に、深い理由なんてないよ。君はただ流してくれればいい。
それだけだ。

『えっ?でも…。』
突然すぎて反論の言葉もみつからない。

夏の終り
あまり知りもしない男を、便器に入れて流す事にしました。

ジャーーーーー
狭い個室に知り合ったばかりの男と女。

ジャーーーーー
水音だけが、夜の静けさに鳴り響く。

ジャーーーーー
激しく流されている男。
排出物がいつも流れるその場所から。

ジャーーーーー
水の音と男の背中をみて何かをつかみかけてしまった。
流されている彼が、その小さな背中が、たまらなく愛おしい。
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