船に乗る/吉田ぐんじょう
 
陽も暮れきった午後六時
買い物メモを持って靴を履く
切れているのは醤油
それから時計に入れる乾電池
八時には夫が帰宅するので
急がないといけない
台所にはやりかけのパズルが広げてある
電灯はつけっぱなしにしてゆくつもりだ
テーブルを片づけて電灯を消して
カーテンを閉めてから出かけると
帰ってきたときがらんとした寂しさを感じる
まるでわたしが不在だった間に
そこに
容易には埋められない
ぽっかりした穴があいてしまったかのように
まあそんなことはどうでもよいのだけれど

ドアを開ける

そこには
いつもの見慣れた階段ではなく
霧深い海が広がっていて
大きな白
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