混沌/岡部淳太郎
こうしてまた
私は還ってきた
別の混沌から
元の混沌へ
この世はただ混沌が
現象するだけの場所
あの世ではすべてが絶対的に
整理されている
(おそらくそこに、)
(天国などというものはないのだが、)
そこに行った者は
残った者の今後や
先に渡った者の行末について
それなりに心配していたらしい
その者は
私のように還ることなく
灰となって行ったきりで
もう目には見えないのだが
それでもいつまでもつづく
迷子の時代
やがて混沌が整理される
風葬の春を思い描いて
私はなおも積極的に
迷いつづける
別の混沌はいまも
意味なく
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