目の前のグラス/haniwa
窓の外が光った。爆発音が聞こえ、壁がびりびりと振動した。僕らは顔を
見合わせた。一人が立ち上がり、小さな窓を開けた。色とりどりの光が夜空を埋め
尽くしていた。
「今日だったな、花火大会」
「全然忘れてた」
「行く相手もいないし」
「なにか起きたのかと思った」
「なにかってなんだよ」
「なにか凄い事だよ。世界の終わり的な」
「もし、いま世界の終わりが来たらどうする?」と誰かが言った。
僕は「こうする」と言って、目の前のグラスを飲み干した。
そしてしばらくの間、僕らは無邪気に笑い合った。
「もう一杯飲んだら、次行こうか」と誰かが言った。
戻る 編 削 Point(5)