横たわる少女/三条麗菜
 
ものを
誰かが隠すかのように

私たちはなぜ樹ではないのか
私たちはなぜ樹ではないのか
繰り返す疑問に歪んだ顔は
もう整うことが無く
鏡を見たところで記憶に残るのは
目鼻も輪郭も失った顔

体の中で育ってゆく
できかけの命を取りだして
地面に植えれば
それは人間ではなく
樹として育ってゆくのでは
ないでしょうか

横たわる少女は腹を押さえ
体液を滴らせながら
そう思ったのでした


    東京国立近代美術館
    「イケムラレイコ うつりゆくもの」鑑賞による


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