金魚/つむ
身じろぎするとべたついた手のひらで塩がとける
額に髪を貼りつかせている私の前で
一パーセント溶液の病室を金魚は軽やかにひるがえってみせる
ないはずの瞼を半ば閉じ
憐れむように金魚はわらう
優しく泡をころがしながら
ぶくぶく
私の蝕まれた体が腹を見せて浮かぶ日
べたべたにどろどろに汗をかきながら
お前は私を見つめているのだね
大丈夫、お前の骨の間はだいぶ住み心地がよいから
私はもうずっと何度でも
そこで尾をはためかせてあげよう
西日の傾きが四角い小さな部屋に忍び込み
真っ赤な旗(フラッグ)が永遠に振られている
夏だね
ああ何度目の夏だろう
透き通った病室に涙をそそぐ私を
幻がやさしい二つの眼でみている。
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