金魚/つむ
汲み置いた澄明になお念を入れ
氷砂糖のようなカルキ抜きの粒を一つ二つ
一パーセント濃度に計算された塩を狂いなく量り投じ
溶かし
晩夏のあかるい日差しの中で
すきとおった病室に赤い尾をひるがえす金魚
小さい泡を吐いている
耳を澄ませば幽かな口ぶりで
ぶくぶく
そんなにも生かしておきたいのだね、
金魚はわらう
おまえは変わったやつだ
赤い半透明のからだにまとわりつく綿のような白い病巣
微細な硝子細工の泡を惜しみなく転がしては壊し、
涼しげな顔つきでお前は泳いでいる
ぶくぶく
夏だね
そう何度目の夏だろう
お前、汗をかいているね
水の外は暑いのか
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