ぼくら/佐藤章子
少しずつ息をはく朝
忘れてしまう 私だけが
曇る壁ごしの声は
緑がかった海の中で揺れて
いつしかぬけがらになって
晴れた空に映した呼吸と
藍色になりたいという君に
白い花を贈ろうと願います
ただ腕を下ろした君を横たえる時は
いつか隣に座って
つま先から反射した光へ
飲みこまれていきます
淡い手のひらを流れていく夜
渦まいた今よりも遠く
雨からこぼれる歌も酸化していく月も
手をつなぎたいとうつむき
目をとじた日には
ゆっくりと笑ってみることにします
もし星たちが隠れてしまっても
足元は透明なままだから
私は傘も持たず
涙が歩きだすことを想います
乾いた階段の上で欠けた靴をそろえ
飛んでしまいたくて
届かなかった窓ぎわの君と
世界はまた傾いて
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