そして君はもしかしたら鳥になるつもりなんだ/ホロウ・シカエルボク
苔生した石の階段を滑らないように注意しながら、八月の名残にべっとりと濡れた九月初旬の山道を僕らは登り続けていた。装着して三ヶ月になる義足の感触にも君はずいぶん慣れてきたみたいで、隙を見つけては僕を追い越そうとしてにやりと笑った。ようやく本気で夏を見送ろうと決めたツクツクボーシがアブラゼミやミンミンゼミを隅へ追いやって、背の高い木々に囲まれた小さな遊歩道は秋を迎える心得を煩く喋り続けてるみたいなシンフォニーに満ち満ちていた。「呼吸器が綺麗になる」と言って君は笑う。「変な感想」と僕は答える。そんな穏やかな弾丸を撃ち合って僕らは互いの心の命中率を確かめる。なにも変わっていない。君の脚が一本減った
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