対岸のひと/恋月 ぴの
 
は、いつもながらのコマーシャルと
こんな私にもチャンネルを変える選択肢ぐらいは残されていて

一人称の悲しみはどこまでも一人称のままならば

僅かな同情さえ成し得ないもどかしかさと
第三者で居つづけられる安堵の狭間で

フェンス越しに見えたもの

植え込みの緑とアスファルトに整列した黄色い駐車区画

放物線を描けばあれにも届くのかと

水際に積み上げた石ころの頂へ問いかけてみる



戻る   Point(29)