みずのはる/あぐり
頭をわれば
中にはまだ
あの頃のものが
ある気がする
うわべ、ひょうめん
はりついてひふになったおだやかさで
しあわせをかみしめて今日も生きているけれど、
わたしの、なかでふと、ざわざわ眼をひらいて
たくさんのなつかしさと、
叫べないぐらいのおそろしさと、
わたしの、わたしのものだといういとおしさで、
すてることさえ思いつかないあの頃のものが
わたしのなかでふと、ざわざわ眼をひらいて
まばゆい白さの中で
ずっと笑っていられるほどには
すこしずつつもっていく時間
ふりかえればまだ、あの頃の空
どこを見てよいのかわからないこの先に
背を向けながら立って風が
うしろに、ながれていく
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