窓際の眩暈/シホ.N
知らない街に居た
いやよく知ってる街だった
移ったばかりの部屋の
窓際に
くる日もくる日も座っていた
窓際に立つと眩暈が起こるので
窓際に座っていた
これは一つの逃走だった
しかも二重の逃走だった
すべてから逃げる
すべて捨てて逃走すること
その事からさえ逃がれるための
逃走だった
逃走から逃がれるための
闘争だった
感覚を遮断しつつ
感情を無化しつつ
そうするように修練しもした
けれども一つどうにもならない
窓際に立つ時の眩暈のようなもの
むしろそれをどうしようもできない苛だち
いま逃走は
得体のしれない何かからの逃走だ
そしてこ
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