ゆく夏に/千波 一也
 


あの灯りのなかに
いつかの僕たちがいる

迎えるでもなく
さよならでもなく
あの灯りのなかに
懐かしい日がある

見えないものに
この目を輝かせる僕は
いつかの日々の
星かも知れない

背伸びなんかじゃ
星にはなれない
眩しいだけが
星じゃない

そうして僕は背を向ける
夕刻わたる涼風に
あらがうでもなく
屈するでもなく

ゆく夏に
置いてきぼりに
されないように

ゆく夏に
僕をたしかに
預けるために






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