童謡/伊月りさ
わたしが うたえるのは
あなたが ここでねむっていてくれるから
その細くあたたかい寝息が
わたしの血を走らせて
うたいたい
うたいたい
気持ちにさせてくれている
東京のはずれ
今日もバナナを食べましたか
遠くから運ばれた糖分で
あなたは うたう
あなたの うたごえ
つづられた厚い本を
小さなうでにかかえていた
あれから十五年間ずっと
うたいたい
うたいたい
気持ちのはじまりには
いのちに対するそのまなざし
おさなさに
あなたは一つの社会でした
記憶の限界をこえて
深奥にねむりつづける
このうたは
あらゆるいのちに そそがれつづけるので
あな
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