冷透/魚屋スイソ
 
冷蔵庫の炭酸水を飲みながら、太陽をみちづれにして水時計の中身が落ちていくのを見つめていた。むらさき色の部屋が暗くなるまで、シンセサイザーの上でダンスを踊っても、凝り固まった意識が頭蓋骨に当たる反響音で目が覚めてしまう。むきだしの矩形波が食い込んで、指に歯形を残していくが、血は出ない。おれはいつのまにかノーマライズされてしまった。おまえはいつのまにか消えてしまった。砂浜へ続く夜道を歩く。おまえの好きな歌を息切れするまでうたって、溺れるという感覚が遠のいてしまわないようにする。海を、呼吸を忘れるためのツールとしてとらえる。繋がらない番号にダイアルする。耳に当たる波のうねりと、水中で回転する魚の発光が、
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