遺書にはならない足跡/セグメント
 
げられたことがある。また、もう二十分以上話しているし次の患者さんも待っているわけだし、もういいかな、とも。確かに初診ではない私が二十分も自分の内情を語ったところで必要のない部分と判断されるのかもしれない。医者は対応する薬を間違いなく処方したいだけであって、私の環境や感情の深いところまでは求めていないのかもしれない。たとえば、毎日がやたらと不安である、原因はおそらくあれである、自覚症状としては眩暈が多い、ふらつく。そういった具体的、かつ、表層的な情報を患者から聞き出したいのかもしれない、処方箋を出す医者としては。だが、良く考えてみてほしい。精神状態が普通ではないと自分で判断、あるいは他者に判断された
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