夏の子供/山岸美香
子供の頃、私も君も涼しい格好をして近所にある人の家の花壇に集まった。
その場所には私が誘ったのだった。
私はこのピンクの花は蜜が吸えると言って花に口を付けた。
君は私を疑って、引いた表情をした。私は逆に強気になってしつこく勧めた。
躊躇した顔が、甘さを知って驚きの表情と声になる。
私は得意げになってわざと横を顔を向いて笑っていた。
素直に振る舞えない私の、不器用な愛情表現だった。
子供の君は、私の笑顔を褒めてくれた初めての人だ。
私はその頃に、笑う事が好きになった。
大人になる君が変わってしまって
私も変わってしまっても、ずっと続く夏の記憶。
戻る 編 削 Point(2)