ジャズ・ピアノ/渡 ひろこ
 
走るトリル
軽快な鍵盤の連打を聴くうちに
視界が開けて広大な一本の道が現れる
どこまでも追いかけてくるスケール
トップスピードの旋律に
併走したくて意識を集中させる
Gコードを蹴散らし
または操りながら行軍していく
逞しい指先


八十八鍵の音色を率いて
今彼はカナダの森林を縫う
マッケンジー川を描いて見せてくれている
曲の中に景色を描き
音符の言葉を散らして私に投げかける
甘い響きなどない
一分の隙もなく
彼が愛しているのは音楽だけだ


クールで端正な音を拾いながら
競りあがるリズムの稜線をたどると
眼下にはロ
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