浮音/伊月りさ
 
明け方
碇は頼りなく
右奥の石臼が
歯軋りのように現実を粉砕する
わたしは急須の中で
丁寧に開かれているようにみえて
何層もただれていて
歯をくいしばって

  《七歳のF》
  ま女をかけおりる
  二人の黒いはおりもの
  そして
  エレベーターの中でわたしはねそべり
  あるいはゆかであり
  だれも手をさしのべてくれなかったこと

  少女は海底から親指を引き抜き
  さびしい唇は激突した
  鋼鉄の白い壁は
  舌先にちいさな乳首をつくってくれた

明け方
粘膜の母を
きみが舐める

  《十四歳のF》
  逃げる

  少女は
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