お玉/春日線香
 
庭で武将が跳ねまわっている
敵が来るから加勢しろという
大慌てで縁から出て
どうすればいいのかと聞くと
とりあえず今日のところはこれで
火を消すのだ、とお玉を渡される
見れば裏の家が燃えている
家が燃えているのに
お玉はないじゃないか、と文句を言うと
武将は怖い顔で睨みつけてくる
次はお前の首だぞ、という風である
急いで井戸に走り寄って
お玉で水を掬い上げようとする
けれど井戸はからからに枯れている
水はこの前の宴会の時に
全部飲んでしまったではないか
武将はますますいきり立っている
裏の家は激しく燃えている
手の中でお玉が
俺を使ってあいつを殴り殺せばいい
とささやきかけるが
どうしたものやら
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