『三面鏡』哀歌/千月 話子
 

 あやふや


降り止まぬなら消してしまおうと
ほの温かい息を吹きかけ
袖口でこする 広がる 靄
増大して映る顔 どこにも居ない


やがて 近づかない 近づけない
開いて 距離 薄布の向こう側へ・・・


 もうそこに 映る事無く 古道具屋に 
       売られて行くの  三面鏡


閉じる前に 開いた空は 『明け方』で
後ろ向きに見た 金色が
広がって 広がって 一杯になって
弾かれた 光り 「さよなら。」


ああ、、、合わせられた昨日と今日の
『しののめ』が古い写真を見るように
遠い色 静かに変色して行くようです



戻る   Point(5)