ホームステイ/北村 守通
見ないわけにはいかなかった。
人前に出て行くためには身だしなみを整えるのは最低限のマナーであったし、鼻の下のにきびがどうにもうっとうしくって、そういったものを確認しておくためにも、一日に何回かは鏡を見ないわけにはいかなかった。
けれども、彼女が来てからというもの、私は鏡を見るのがおっくうになり、その度にため息をついていた。
彼女がどこから来たのかは私は知らない。
彼女の名前も私は知らない。
けれども、彼女はいつの間にかそこに居て、鏡の前で確認をしている私のことをだまってじっと見ていた。何度か、コミュニケーションをとってみようと試みてみたが、いずれも失敗に終わった。彼
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