朝デニーズ/salco
 
カウンターでモーニングを
こうして毎日摂れるのは
四十年間働き続けたおかげ
払って来た厚生年金の余禄
震える指で煙草をつまみ、吸い
灰皿に戻して
まったりの店内を吹き抜けるウェイトレスが
半紙のように置いて行った盆に向かう
シミの浮いた禿げあたま
補聴器を右耳に
ガタの来た脊椎を屈めて
震える指で割箸を出し、持ち
飯粒をぼろぼろ、半熟の黄身をこぼして運ぶ
この五月で八十になった

年金支給開始日と違い
ばあさんの方が先立った青天の霹靂
昼はコンビニのパンか握り飯
皿一枚、洗った事がない
夕方には給食が届く
ちんまりと仕切りに収まった
味気なさだけ食っている
まだ食わねばならないのだ
三度三度
いつまでとも知らされず
一日を
誰とも話さない
誰とも逢えず

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