小詩集【花鳥風月】/千波 一也
 


風のなかには
なんにもないのです

だから
みんな言葉になるのです

孤独や希求や焦燥に
つかのま触れた
気になるのです



いけないことなど
どこにもひとつもありません

許されることや
迎えられることだって
ありません

信じるもなにも
季節はとうに風なのですから

一度
帰ってみては
いかがでしょうか





四 月のしずく



月のしずくは甘いので
虫を呼ぶのに都合がいい

月のしずくは甘すぎるので
虫は日ごとにおろかになって
それをついばむ
鳥が栄える



月のしずくは砕けても
きれい
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