異心のひと/恋月 ぴの
 
れど

ぱたぱたと扇ぎながらのそぞろ歩き
和太鼓を叩く音は相変わらずで

力強く
そして官能的でもあり




幾つになっても「明日また」って言葉が大好きで
こんな私の葬式にお坊さん来てくれるのだろうかと悩めば

参列者の来ないお通夜の席に年老いた母ひとり
めっきり不自由となった足腰を嘆くも

先立ってしまった娘の不憫さには口を閉ざす




いつかの日にも聞こえてきたような
和太鼓を叩く音

小刻みに
闇へと流れた我が子の鼓動



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