異心のひと/恋月 ぴの
 
どれほど歳を重ねたにしても
夏の終りは感傷的で

どこかしらか和太鼓を叩く音が聞こえてくる

リズムを刻んでいるようであり
生の在り様を現そうとでもしているのか

小刻みに
あえて無表情に




大人になってからの宿題
誰から急かされることもなく
手をつけなかったとしても咎められたりはしないので

夏をやり過ごす毎に重荷となったそれを

精霊流しと拝む

そんな一時しのぎを繰り返しながら
いっぱしの大人になってしまう




浴衣には扇子より団扇が良く似合う

年に何度も袖通さないからと
どこぞのセールとかで仕入れた記憶あるけれど
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