箱庭の愛/草野春心
僕の中に小さな女の子がいる
無垢な目に鋭さを湛え
頭には白い花のかんむり
僕の中に女の子がいる
僕は彼女に恋をしている
それは君じゃない
君の中に小さな男の子がいる
どこまでも高くブランコを漕ぎ
不器用にひとを傷つける
君の中に男の子がいる
君は彼の頬にキスをする
それは僕じゃない
僕の中の女の子と
君の中の男の子
そこで交わされる秘密の言葉が
僕を
君を
すべてを優しく奪いとってゆく
僕たちは妬まない
それは愛なのだ
水のように静かな暗闇のなかで
僕たちはもう二度と
孤独になることがない
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