かなしいさかな/千波 一也
 


水の
こぼれ落ちる音が、すき

みずしらず、な
はずもないのに

わたしはまったく
かなしいさかな



水が
なくのを
聞いたことがない

そのくせ
わたしは過ぎて
いく



水も
わたしも
きれいが、いい

理由は
おのおの違っても



水を
わたしは
飲み干せない

飲み干せたなら
溺れない、
のに



水に
なれない
わたしはさかな

すべてを
言葉のせいにして

わたしはひたすら
守られたがる





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