かなしいさかな/
千波 一也
水の
こぼれ落ちる音が、すき
みずしらず、な
はずもないのに
わたしはまったく
かなしいさかな
・
水が
なくのを
聞いたことがない
そのくせ
わたしは過ぎて
いく
・
水も
わたしも
きれいが、いい
理由は
おのおの違っても
・
水を
わたしは
飲み干せない
飲み干せたなら
溺れない、
のに
・
水に
なれない
わたしはさかな
すべてを
言葉のせいにして
わたしはひたすら
守られたがる
戻る
編
削
Point
(6)