夜まわす夜/木立 悟
原さする原
鳴く原に降る
雨の文字
手のひら
火ともし
まぶた うつほ
指ひとつ 空を隠し
ゆらゆらと潜むもの
巨きな 花のかたむき
片目をつむり
屋根に水を捨て
音をつまんでは捨て
つまんでは捨て
迷いの風 渦の風
まだらな光の到かぬ場所に
花のかたちは集まってゆく
地下を飛ぶ鳥
街が転んだ そのあとに
虹は 降りて
去る音が去らずに居る
見えないものが立ち
入口を 隠している
緑に触れては
金になるもの
ひとり金に 変わりゆくもの
人のかたちの曇が
左腕を空へ連れてゆく
図書室の灯が消えない径
丸い棘を踏み
夜は夜を廻す
かかと土ふまず 黒と黒と金
かかと土ふまず 黒と洞と金
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