白昼夢/麦穂の海
「もしかしたら、今は見えない
戦争状態じゃないのか?」
野営地で目を覚ますと
体中が汗ばんでいた
ジッパーをあけると
ナイロンの外は青空だった
すでに日は高く
肌を焼く太陽光に
二の腕の産毛が白く踊る
ガスマスクは外しているので
息苦しさはないが
この明るい
朝の外気が
無臭の猛毒をはらんでいることに
気づくと
いつもながら
腹の底がひんやりしてくる
Wi-Fi入りの古い液晶タブレットを開けると
メールが4通
1通はメーリスで
トウキョウのデモで昨日
2人が撃たれた
という情報だった
心臓をぎゅっと掴まれ
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