3月11日/麦穂の海
ひとの一生ははかなくて
ふいにやぶけてしまう
ぴんとはった
うすがみのように
3月11日
がんを患うあなたの目の前で
おそらく数千の一生が
一瞬にしてやぶけてしまった
あなたのいのちのほのおを
絶やすもんかと
手でおおい、体でおおいして
あなたの横たわるベッドの周りを
大勢の人が手をつなぎ
運命の強い風から守りたいと願う
その前で
ほのおをじっとみつめる間もなく
吹き消されてしまったいのち
たちを
私たちはぼう然と見ていた
あの数分間ゆれにゆれる地面にふんばりながら
落ちてきそうな食卓のあかりを押さえながら
思い続けたのは
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