わすれもの/佐々木青
大切なものをわすれてしまった
気がするけど
何をわすれたのか思い出せなくて
それはすでに
わすれたことをわすれたのと同じように
もう意味なんかなくて
でも
あんまり利口じゃないから
どれだ どれだ と
街を歩いてさがしだす
ある晴れた日の
うららかな昼下がり
わすれられたものたちの
おおぜい集る街の
ショーウィンドウにならぶものに
おねえさんの
風にもなびかぬほどの
短いスカートが
おおきく口をあけて
すらりとのびた
脚
がある
おねえさんは
派手だから色っぽいのか
色っぽいから派手なのか
考えてたら
わからなくなって
帰って
ネットで調べることにして
おねえさんのスカートを
風のように通り過ぎる
午後
わすれものなどわすれてしまうほどに
わすれゆくものたちは
また
どうでもいいように
わすれていく
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