世界=内臓族/paean
 
 柱の向こうに白いのが居た。見直すと居なくなっていた。


 幽霊ではなく幻覚だと思う。そこに突っ立ってる扇風機の白、それがなにかの拍子で柱の向こう側へ移動しただけ。わたしの視界のすみではいつも幽霊たちがうろちょろしている。「点がみっつあれば顔になる」。白は女の顔になる。幻覚だって分かってるのに消えない。見抜けば消えるって先生は確かに言ったのに、先生、先生の影も最近は薄れてしまってちっともわたしをたすけてくれない。先生はどこ。


 先生にのせられたせいでわたしの皮膚は内臓じゃなく世界のほうを包む仕様になっていた。「世界が気に入らないなら是非ともそうするといい」って先生が言った。世界の
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