埋もれそうな意義/yuugao
 
屋根つきのテントの下で
衰えを知らない管楽器の音を聴きながら
ドリンクサービスのグラスを前にして
売り子のように気取ってみせる。

 これ、なんとなく夢だったんだよね。

我に返そうとする、もう一人の我を振り切って
「我ここに在り」なんて
ついつい調子づいて輪をかけてしまう。

 そろそろ限界かな。

怪しく思われ始めるサインを感じて
足早に引き返してきた。

 さて、さりげなくグラスのお替りをと。

新しいグラスを手にして
そそくさとテントから離れ
自分の定位置へと戻る。

 これでまた、いつもの通りに出てしまったなぁ。

どうせ、グラスを持ったら見失える存在なのだから
少しくらい見逃してくれてもいいじゃないか。
戻る   Point(1)