祝祭のひと/恋月 ぴの
 
くなったとしても
誰も悲しんでくれなくて

女の唇は紅よりも紅く濡れそぼり




金だらいのなかで泳ぐ金魚

鼻筋に塗った水白粉

豆絞りで飾った髪にかんざし一輪
わけもなく嬉しくて山車の後ろを付きまとい

切れた鼻緒にべそかけば

お嬢ちゃんの家まで送ってあげるからと
見知らぬおじさんがわたしの肩を優しく抱いて

鎮守の森の暗がりは

幼い心を弄ぶ




あっ
   風の軋む音がします






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