祝祭のひと/
恋月 ぴの
くなったとしても
誰も悲しんでくれなくて
女の唇は紅よりも紅く濡れそぼり
※
金だらいのなかで泳ぐ金魚
鼻筋に塗った水白粉
豆絞りで飾った髪にかんざし一輪
わけもなく嬉しくて山車の後ろを付きまとい
切れた鼻緒にべそかけば
お嬢ちゃんの家まで送ってあげるからと
見知らぬおじさんがわたしの肩を優しく抱いて
鎮守の森の暗がりは
幼い心を弄ぶ
※
あっ
風の軋む音がします
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