通夜ー改訂版/……とある蛙
は何かに怒り
一人は大いに悲しむ
二人は兄弟で
二人は仲が悪い
祭壇の亡骸に手を合わせるものは
弟の仕事関係者だけで
兄に仕事は無い
三々五々の弔問客
痩身の兄は何思う
涙顔の弟は何思う
ともに大好きだった母を失い
母がこの世に残した忘れ形見二つ
二人の男の子
一つ 家族が消え失せた。
喪服を着たおばさん四人
交差点を渡り、口々に話す。
一人は楽しげに
久しぶりねぇ
などと通夜であることを忘れ
一人は怒ったような顔をして
どうしてなんでしょうねぇ
などと宣う
一人は困ったような顔をして
なにも語らずに
下を向き俯いたまま黙っている
一人は寂しげに
語ろうとしたが、
ふっと溜息をつく
そのまま四人は何もなかったような
日常に戻る
ヒト一人死んだ。
そして、夜空に向かって降り注ぐ光
ひとたま
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