秋の始まり/花キリン
遠くへと雲が流れていく。暑さの真ん中が少し移動すると、残暑お見舞いが次から次へと届く。蝉が鳴き急いでいる。新盆まわりを忙しく済ませると朝夕の風が庭先で、涼しさを演出し始める。伸びた雑草に足をすくわれて苦笑いする風。月の丸みは欠け始め、木々が騒がしく衣替えの相談をしている。赤トンボが群れている辺りに青い空が落ちてきた。ときおり風などが吹いてきて、日めくりを何枚か捲ると日が一気に短くなり、置き忘れてきたものを辿ろうとすると途中で遮られる。全神経を集中させて孤独な真似事を置くと、それが少しずつ膨らんでいって暑い夏は終わろうとしている。季節の便りには、季節の香りが欠かせないから、メールではなく手紙にした。色合いは地味でも、これが秋の始まりなのかも知れない。
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