ともしび/千波 一也
 


すっかり消えて
しまった
あとに、

思い知らされる
こころ細さがある


あれは
たいせつな
灯りであった、と

ちいさく震える
夜がある



 通りには
 風があふれていて

 それゆえ無風、と
 思い違えて

 ひとは
 寒さを語ることばに
 長けてゆく


 ひとり、
 ちいさな灯りに笑んで



季節のめぐる
理由について、

わすれてしまうのは
しかたのないこと

だけど、

それは
じょうずに
迎えにくるから

ひとは
まもり、を
愛してやまない



 やさしくなれない
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