暑い日/智鶴
知らない内に何も分からなくなった
僕は何処へも行けないし
君の居場所だって知らないままだ
気がついた時には君が何処にいるかも
何をしているのかも
もしかしたら
僕の隣にいるのかも
分からない
風の音がした
木陰に座った君の声がした
破裂音と慟哭
ふわりと飛び散る白い布が見えた
それを追いかける君の
声?
嘘ばかりで満たされた溶液を喉に流し込んで
漸く何も分からなくなれると
手を離した瞬間に走りぬけていった
大きな穴の開いた内臓を抱えて
僕は何処へ行くのですか
誰も知らないまま僕が死んだとして
僕の死体が流れ着く場所は
赤のまま傾いた船の上
誰かに届いているかも分からない僕の夢は
美しくないまま放たれて
何処にも染み込まないまま海へと落ちて死んだ
理不尽を噛み砕いた君の強かさが
何も知らない
柔らかな僕の意識に似ている
暑い日だった
風の音がした
木陰に座った君の声がした
僕を覗き込む君の顔が
貴方は誰と聞いていた
全部嘘だと知ったんだ
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