凡才/草野春心
 


  嬉しいときは
  笑うことしかできない
  わたしは凡才なので
  トイレットペーパーがきれたとき
  からからという音がしても
  それ以上なにも感じない



  悲しいときは
  悲しいと思うしかない
  わたしは凡才なので
  世界じゅうの生きものが
  いっせいに交尾を始めたとしても
  それ以上のことは書けない



  わたしは凡才なので
  生きるときは
  生きることで手一杯で
  それ以上でも以下でもなく
  いま
  だれかの頬を
  穏やかな風が撫でていったけれど
  わたしは
  凡才なので




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