わたしのいのちは天(そら)へはいかない/小原あき
わたしが死んだら
なるべく生き物がたくさんいるところへ
なるべくそのままの状態で
置いておいてください
土にかえったり
誰かの一部になったりして
わたしはわたしの
いのちを分解したいのです
なるべくいろんな物の中に取り込まれたい
それはわたしの選択肢が増えるということ
どれにこのたましいを
移そうかという選択肢が増えるということ
土になってしばらく黙っている気になるかもしれない
そうでなくて熊に食べられて熊の子になるかもしれない
はたまた土からすばやく木に取り込まれて
木の実になって鳥に食べられるのを待っているかもしれない
そうして鳥の子になって
いつか飛びたかった空を
自由自在に飛ぶかもしれない
わたしが死んだら
お墓になんて入れないで
あそこは硬くて冷たくて
すぐに次のいのちへいけない
なるべく多くのいのちのあるところへ
置いておいてほしいとおもうのです
戻る 編 削 Point(16)