批評の宛先/佐々宝砂
 
・ブラウンの著作(のちにみすず書房から全訳刊行)。私は、難解な『ラヴズ・ボディ』の内容そのものではなく、『ラヴズ・ボディ』の手法、引用で世界を語ろうとするその態度に強い憧れをおぼえた。真似したいとおもった。それで足取りおぼつかないまま「他人の足で歩く」ことを試み、しかし、できあがったのは引用文からなるラブレター……

 マコトにアホな話で恥ずかしいが、たぶんこのあたりに真相が潜んでいる。んで、私は、ここで強調しておきたいのである。既存のものを解体して引用の織物をつくろうとする態度にあこがれて試みたこの「引用ラブレター」の宛先が、引用文献の作者ではなく、知的あこがれの当の対象であるノーマン・O・ブラウンでもなく、批評とも詩作品とも直接は関係ないごくフツーのそこらへんのオトコだったことを。


11/21追記。ISは、廃刊だか休刊だかになったらしいです。原口昇平氏が指摘してくれました。ありがとう。

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