言葉のゆくえ??夜のめるへん/佐々木青
 
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聞けば話をしたのも久しぶりのようで、私が立ちどまったのが嬉しかったらしい。あとでたくさんお礼を言われた。私の夜中の散歩が、老いた街灯の魂を救うことになったのは、なんとも不思議なめぐり合わせと言うほかない。しかし、彼は少し呆けながらも何度も私に尋ねてきた。「どこ行くんだ」と。それは私にも分らないから、街灯と別れたあとの私をしきりに苦しめた。ううん、なぜ外に出ようと思ったのかすらわからなくなってきた。それはつまり、はちきれんばかりの憂鬱が風や鳥や、猫や、虫や、はたまた老いた街灯によってどこかへ飛んでいってしまったということなのだろうか―あるいはそれらは姿をかえて―。

  結―眠りまで

思えば少しねむくなってきた。私がつむいだ言葉たちは、私に新しい角度で現実を見させ、確かに私を救ったかもしれない。しかし、私を白日のもとにさらすのは言葉たちが帰ったあとの眠りの役目だ。私は目を閉じ、最後の言葉を夜に浮かべる。「おやすみなさい」

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