イギリス/梶谷あや子
波に置き去りにされる
無数の月の呼吸
たとえ 別れの言葉だとしても
伸ばした腕のなか
目覚める速度で
伝わるなら
どうか、お前が
迷わぬように
*
パネルの上にことりが落ちた
沼には近ごろ 行っていないから
やさしい兄のことを
想いだすまえに
忘れそびれてしまって
それが淋しくて ゆめのなか目を凝らす
祈っても(おれには)、届かないと
わかっているけど
かわりのものはない
のどのおくに溜まったまま
温かな胸のつかえが とけたらきっと
もう永遠に
そのやせた指を帰すことができる
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