Earthbound(VCS3)/木立 悟
ひとつの錐と
ひとつの傷
その間にあるものすべてが
錐により傷に押し込まれてゆく
錐により 錐により 錐により
奏でる前に
降っていた
奏でられるはずのものが
降りつづいていた
誰も奏でてはいないのに
何も奏でてはいないのに
暗がりに
かろうじて錐は見えている
表すものを
表すことなく表そうと
ただ細く深い傷に向かう
骨を伝う音
影のようにひろがる水
独つ目の灰が空をすぎ
鱗の光と指を巡る
(複眼の朝 複眼の朝)
くちばしが
青黒く光り
土に刺さろうとしている
(うたをうたおうとしている)
(うたを
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